小学校の給食当番指導の効果的な方法・システム【ポイント9】

先生の仕事

小学校の給食当番は、子どもたちにとって貴重な学びの機会です。当番活動を通して、責任感や協調性、自立心などを育むことができます。しかし、指導方法によっては、子どもたちにとって負担になり、効果が得られないこともあります。

今回は、愛知県教育委員会から出ている「給食の時間における担任としての基本事項」を元に、私の経験から得た指導ポイントを紹介します。

最優先は食べる時間の確保

まず、給食で最優先に考えなくてはいけないのは、児童に十分な食事の時間を確保することです。

十分な時間を確保しなければ以下のような問題が発生します。

・食事時間が短いと、十分な量を食べることができず、必要な栄養素を摂取できない
・早食いとなり、のどを詰まらせるなどの事故の原因にもなる
・食事を単なる作業として捉え、食べることの楽しさや大切さを実感できなくなる
・食事を楽しむ余裕がなくなり、児童にとってストレスとなる

・児童にとって話ながら食事をするのは学校での楽しみの一つでありそれが無くなる

給食というものは、児童の生命においても、学級経営においてもかなり重要なもので、甘く見てはいけません。十分な戦術・戦略をもって臨みましょう。

小学校の給食時間における食事時間は、20~25分程度が望ましいとされています。
これは、児童が時間内に食事を完食し、食後の活動に支障がないように考慮された時間です。

この前提を踏まえて給食当番のシステムやその指導方法をお伝えします。

指導ポイント9

4時間目は時間通りに終わる

4時間目の授業が延長しないようしましょう。
でなければ、給食にかける時間が短くなってしまいます。

というよりも、4時間目に関係なく、授業はチャイムぴったりで始めて、チャイムピッタリで終わましょう。

給食の話題とはズレてしまいますが、授業時間を超えてはいけない理由です。

児童の集中力はチャイムが鳴ったら切れる
児童の集中力はチャイムが鳴ったら切れます。不思議なことに年齢関係なくです。なのでそこでだらだら延長しても児童の頭には入りません。むしろ考えているのは「早く終わらないかな。」「休み時間が短くなるな。」です。

次の授業に支障が出る
授業時間を超えて授業を続けることは、次の授業の開始時間を遅らせることになります。次の授業の準備ができない、次の授業の時間が短くなってしまうなど、次の授業に支障が出る可能性があります。特に教科担任制の学年ではとても迷惑です。

・児童の信頼を失う
おそらく日本中の先生は児童に約束やルールを守るように指導をしていると思います。だから児童が休み時間に遅れて教室に戻ってきたら指導をしますよね。では、授業が延長するのはなぜ許されるのでしょうか。先生も時間を守りましょう。逆に授業の時間をきちんと守ると児童から信頼されるようになります。

人数は10人前後で

給食当番の人数ですが、「配膳する人」と「配る人」合わせて10人程度でちょうどよいです。

なぜ10人がちょうどいいのか理由は以下の通りです。

・人数が多すぎると一人あたりの責任が少なくなるので懸命にやらなくなる
・人数が多すぎると配膳中にぶつかる可能性が増える
・人数が多すぎると先生が当番指導しづらい
・動く人数が多くなるのでほこりもたつ

人数が多すぎると一人あたりが貢献度が下がるのをリンゲルマン効果というそうです。

掃除や学級活動の班編成の参考にもなりますので、知っておくとよいでしょう。

リンゲルマン効果

チームの人数が増えるほど1人あたりの出力が減少していくことを明らかにしています。 実験結果によれば、1人あたりの出力は「2人になると93%」「3人になると85%」「4人になると77%」「5人になると70%」にまで低下してしまう
リンゲルマン効果とは?具体例や影響・原因・予防策を紹介

そして、10人の内訳は以下の通りです。

丸缶(汁物):2名
四角缶(主菜・副菜):2名
ご飯:2名
牛乳、デザート、箸:3名

配る人がいないじゃないか、とツッコミをもらいそうですが、児童たちは工夫してやってくれます。

給食当番ルーレットの作り方

年間を通して役割を固定

役割を年間して固定するという方法があります。

たいてい給食当番は周回すると役割が変わるものだと思います。
例:丸缶から四角缶に移動する

私のクラスでは思い切って年間通して役割を固定しました。
つまり、丸缶の子は年間通してずっと丸缶ということです。

これをやることのメリットは以下の通りです。

・年間同じ仕事なので、配膳が上手くなる
・早く配膳するための工夫を考えるようになる
・先生の指導が楽になる

私は1学期のときに「チーム丸缶」「チーム牛乳」のように同じ役割の児童でチームを作らせ、より早く、丁寧に配れる作戦会議の時間を作っていました。

児童同士で代わってあげてもよい

上の給食当番の役割を年間固定することの弊害として、手先が不器用な子が四角缶の配膳になったりすると時間がかかり、またその子に心理的ハードルが高くなります。

そこで私のクラスでは、役割を児童同士の交渉で代わってもよいことにしました。

ただ変わったら先生に一言報告をするように指導しました。

先生が始めに配膳量を教える

先生が給食当番に1人分の配膳する量を教えます。

理由は、全員の配膳される量を平等にするためです。
私は、最初の給食指導で次のような話をします。

マクドナルドのポテトで同じサイズで、同じお金を払っているのに、前のお客さんはたくさん入っていて、あなたは量が少なかったらどう思う?ずるいとか、不公平だと思いますよね?
給食も同じです。毎月みなさんのお家の人から給食費をもらっています。だから給食は食べれる食べれないがあると思いますが、まずは平等に配りましょう。

よくある児童の配膳のミスが丸缶(汁もの)です。具材が下の方に溜まっているのにかかわらず、上の方がすくっていくので、具が全くない児童がいます。終わりの方になると具が多く、汁がない児童が出てきます。

そうすると不公平です。そういったミスをなくすためにも教師がはじめに給食当番に配膳の指導をする必要があります。

また足りなくなって、配膳をやり直しになると食事に使える時間も短くなってしまいます。

1人分が残るくらいに配膳する

基本は「残菜が出ないように配膳する」のが基本です。
しかし、私の場合は1人分ほど余らせるように配膳指導をしています。

理由は、児童がこぼした場合のことを考えているからです。

無事配膳が終われば、残した1人分はおかわりをしてもらいます。

配膳時間は10分前後で十分

配膳時間は10分前後を目指しましょう。

ここで先生が気をつけなくてはいけないのは、どんどん時間を短くしていこうと児童に発破をかけることです。

私からのアドバイスはそれは止めた方がよいです。過去に私も10分を切ることにこだわって給食指導をしてきましたが、以下のような弊害が生まれてしまいました。

・児童が時間を意識するので配膳が雑になり、一人ひとりの配膳量がバラバラ
・児童が時間を意識するので配膳が雑になり、食器から食事がたれたままになる
・焦って配るので、衝突する事故が多発した
・動きが遅い子に対して攻撃的な態度をとる児童がいた

「安心・安全・美しく」を優先にして、10分程度で終わればそれでよいです。

ただあまりも配膳時間が長くなると食事にかける時間が短くなるので、やはり10分前後がちょうどよさそうです。

待つ児童は静かにさせる

約10人が給食当番で配膳をしていると、「20~30人」の児童が待つことになりますが、私のクラスでは徹底して何もせず、静かに待たせました。よく待たせる方法に読書やお絵描きをさせて静かに待たせるというのがありますが私は反対です。

何もせず静かに待たせなくてはいけない理由です。

休み時間ではない
まず、給食時間は休み時間ではないことをしっかりと理解させることが重要です。休み時間とは異なり、配膳中の時間は限られた時間の中で効率的に準備を進める必要があります。一生懸命配膳をしている子がいるかたわら好き勝手お話をしているのは不公平ではありませんか。

一生懸命配膳している児童の邪魔にならないようにする
配膳をしている児童は、多くの食器や食材を運び、一人ひとりの机に正確に配膳する責任を担っています。また給食当番は全員に食事が行き渡った確認するために「ごはんが無い人いる?いたら手を挙げて。」など声を出します。おしゃべりをしていたらその声も聞こえません。

本やノートが配膳の邪魔
机に置きたいのに置けないという状況が生まれます。また給食をこぼすリスクも高まります。給食中は「筆箱」・「ノート」・「本」といったものは片付けさせましょう。

教室に先生がいなくなる場合がある
多くの学校では、教室の近くまでワゴンで給食を持ってきてくれますが、給食用のエレベーターが設置されていない学校では、配膳室まで給食を取りに行かなくては行けません。安全のため先生は給食当番と配膳室まで一緒に行かなくてはいけません。そうなると教室は教師がいない状態になります。

児童は何もすることがないとしゃべりだします。
当然です。

ですが、年間を通して徹底的に指導しましょう。

私は以下の話を年間通して、同じことを指導しました。

今、話すよりも、食事をしながらしゃべった方がはるかに楽しいでしょ?10分だけ話すの我慢できない?それに今は休み時間じゃなくて、これも授業の時間です。自分だったらより効率的にどうやって給食を配るか作戦を考えておきなさい。

食事のときは児童の観察

給食の時間と休み時間は、先生に忖度せず、児童の「素」がでやすいです。

なので、私は児童の観察に徹していました。

方法としては2種類あります。

1児童の輪に入って一緒に給食を食べる
2教師用の事務机に座って遠目から観察して食べる

1の児童の輪に入って一緒に給食を食べる
は児童との関係ができていない4月によくやっていました。また引継ぎをしたときに支援が必要だと言われた児童の観察や家庭状況などの内情を知りたいときにもやっていました。

2の教師用の事務机に座って遠目から観察して食べる
は児童全体の様子を把握しやすくなります。特に児童同士の人間関係や力関係を把握するときにやっていました。1学期の半ば以降は定期的に事務机で食事をとることが多かったです。また3学期になるとクラス編成のことも考えながら観察をしていました。

もちろん呼ばれれば、児童のグループに入って会話に混ざることもありましたが、定期的に自分の席に座って気になる児童や気になる児童同士の会話に聞き耳を立てて生徒指導に活用することもありました。

まるで忍者のようですが、給食は絶好の児童との関係を作ったり、観察をする時間です。

まとめ

今回のまとめです。

・4時間目は時間通り終わる
・給食当番の人数は10人前後
・年間を通して役割を固定
・役割は児童同士で交渉して変わってもよい
・先生が始めに配膳する量を指導する
・一人分が残るくらいに配膳する
・配膳時間は10分前後で十分
・待つ児童は静かに待たせる
・食事中は絶好の児童観察の機会

先生方の給食指導の参考になればさいわいです。

この記事を書いた人

●現役小学校教員13年目
●家事育児のため定時退勤
●ICT・鉄道・授業・サウナが好き
●win-winな仕事の仕方を模索中
●小学校教師を魅力的な職業にしたい
●今年度は特別支援学級

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