授業力向上が重要な理由
では、なぜ教師にとって授業力向上が重要なのか、理由をいくつか述べます。
学校の多くは授業の時間
小学校の教育活動において、授業は最も多くの時間を占めています。例えば、文部科学省の「学習指導要領解説 総則編」によると、小学校の授業時間は年間約1000時間です。
これは、児童生徒の学校生活時間の約8割に相当します。
つまり、教員が児童生徒と接する時間の中で、授業は圧倒的な割合を占めているのです。
もし教師の授業の腕が低ければ、児童は退屈な時間を学校の大半を過ごすということです。
安定した学級経営につながる
上で上げたように教師の腕が低いと児童は退屈な時間を過ごすことになります。その結果以下のような事態が起きます。
問題行動の増加: 退屈を感じると、児童は授業中にそわそわしたり、おしゃべりしたり、他の児童にちょっかいを出したりするなどの問題行動を起こす可能性が高くなります。このような問題行動は、学級経営を悪化させ、他の児童の学習にも悪影響を及ぼします。
学習意欲の低下: 長時間退屈な時間を過ごすと、児童は学習意欲を失い、学校生活全体への意欲も低下する可能性があります。学習意欲が低下すると、学業成績の低下や不登校などの問題につながる可能性があります。
結果、学級経営が難しくなり、教員は多くの労力と時間を費やすことになります。
児童・保護者の信頼につながる
授業力向上が児童や保護者の信頼を獲得するためにも重要です。児童生徒は、わかりやすく楽しい授業を受ければ、教員を信頼し、学習意欲を高めます。一方、授業力が低ければ、児童生徒は教員への信頼を失い、学習意欲が低下する可能性があります。
保護者にとっても、子供の学習状況は大きな関心事です。質の高い授業を行い、児童生徒の学力向上に貢献することで、保護者からの信頼を得ることができます。
定時で帰ることができるようになる
授業の腕をあげると児童の問題行動も減り、児童や保護者からの信頼も得ることができます。結果、放課後に保護者に連絡をするなどの時間をなくすことができるので、明日の授業の準備や、校務分掌に時間を使うことができるようになるので、定時で退勤することができるようになります。
おすすめ書籍3選
大村はま「教えるということ」
- 著者:おおむらはま
- 内容:大村はまの「教えるということ」は、小学校教員の授業力向上に役立つ実践的なヒントが満載の一冊です。児童理解、信頼関係、授業づくりに関する悩みを抱えている教員に、ぜひ手に取っていただきたいです。
私が感銘を受けた内容
教師は子どもに勉強を教えるプロである。子どもを愛するだとか、いい人であるとかは当然で、勉強を教える技術をどれだけ高めるかが大事だ。
教師は批評家ではなく、指導者である。「これは優れている・劣っている」と批評(成績をつける)のではなく、全員が優れた結果を出せるようにするのが仕事。
「わかりましたか?」は禁句。
教師が「わかりましたか?」と聞いたら、子どもは「わかりましたか?」と答えるしかない。
向山洋一「授業の腕をあげる法則」
- 著者:向山洋一
- 内容:授業の腕を上げる法則を10か条あげており、すぐに自分の授業・実践に組み込むことができる。
私が感銘を受けた内容
話の聞かせ方:「何かを持った状態で話を聞かせるのは聞いたうちに入らない」。児童が話している途中に勝手に活動を始めたら話しを途中でも止める。最後まで聞くことを徹底させる。
だめな教師の共通点は、子どものできないを子どもや親のせいにする。できないをできるようにするのが教師の仕事。
忘れ物表を貼ったり、ごほうびシールを与える教師はプロではなく、アマチュアな教師である。
本書は、1985年に初版発行されたため、一部の内容が現在の教育情勢に合致していない場合があります。しかし、本書で紹介されている基本的な授業技術は、時代を超えて普遍的なものです。
まずはこの本に上げてある10か条を徹底して守れば、誰でも授業が上手くなります。
野口 芳宏「授業で鍛える」
- 著者:野口 芳宏
- 内容:子どもたちの知的活力を伸ばす授業づくりについて実践的に解説しています。
私が感銘を受けた内容
努力の道筋を示す:「がんばりなさい」「よく考えて」などの声がけでは、ただのしごき。どうするとよいのか具体的な手段を考えて、教えるのが重要。
児童の発言はダラダラとしゃべらせない。一言でズバリと核心をつくように話しをさせる。
教師が授業中に注目しなければいけないのは、発言者よりも聞く側の児童。児童の聞く技術を鍛えてやると授業の質が向上する。
まとめ
これらの書籍は、いずれも小学校教員の授業力を向上させるのに役立つ内容です。どれも30年以上前に書かれたものですが、現代でも、むしろ授業の腕をあげたいならば、一度は読んでほしい本です。
ぜひ書店で手に取って、ご自身の授業に取り入れてみてください。