「先生、今日の授業、おもしろかった!」
こんな言葉を子どもたちから聞けたら、教師冥利に尽きるのではないでしょうか。しかし、現実は厳しいものです。
「どうすれば、子どもたちがもっと主体的に、楽しく、そして深く学べる授業になるのだろう?」
多くの教師が頭を悩ませている課題です。
このブログ記事では、そんな課題解決に向けて、小学校の授業を面白くする具体的な方法を提案していきます。
この記事は以下の書籍と私が見てきた授業が上手い先生のテクニックを紹介します。
上の本は明日からすぐに使える実践がたくさんのっています。
空白の時間をつくらない
よく授業でみる光景です。
・体育の時間で砂遊びを始める。
・授業中に関係のないおしゃべりが始まる。
・授業中にとなりの子にちょっかいをかける。
児童がそうなる理由は、シンプルに「退屈=やることがない」からです。
特に現代は、インターネットやスマートフォンなどの普及により、必要な情報や商品をすぐに手に入れることができるようになりました。昔であれば、本屋に行って調べものをしたり、買い物に行くために長い時間並んだりしなければならなかったことが、今では瞬時にできてしまいます。このような便利さに慣れてしまった現代人は、待つことに対してストレスを感じやすくなっているのです。
大人ですら、暇であればすぐにスマホをいじってるのに、子どもに何もせずに待てというのはなかなか酷な話しではないでしょうか?
そこで、私が意識しているのは空白の時間を作らないことです。
そして最終的には自分でやることを見つけたり、考えたりして行動をおこせる児童にすることがゴールです。
立場を明確にさせる
主体的な学びの第一歩は、「自分の考えを持つこと=立場を明確にする」ことです。
立場を明確にさせるとは「あなたは賛成ですか?反対ですか?」とYES、NOをはっきりとさせることです。
ノートで立場を明確にさせる
いきなり、挙手で賛成か、反対か確認するのもよいですが、自分の意見はノートに書かせるようにします。
・〇〇という意見に対して、賛成か、反対かをノートに書きなさい。
なぜ、ノートに書かせるか。それは以下の理由からです。
全員が自分の意見を持つこと=全員が授業に参加することになる
机間巡視をして、クラスの傾向を掴むことができる
全員が作業をする状態になるから=空白の時間にならない
話すことが苦手な児童も授業に参加できる
理由を書かせる
賛成か、反対か立場を書かせたら、理由も合わせて書かせるようにします。
・賛成か、反対か書くことができたら、なぜか理由も書きなさい。
・理由は数が多ければ多いほど説得力が増すので、短くたくさん書きなさい。
ここで、理由を書くときに、複数の理由を見つけさせると空白の時間が生まれません。
また短く端的書かせることで、要点をまとめる力が身につきます。
自分の意見に反するのはなぜか
理由まで書けた児童へは次のような指示を出します。
・あなたの意見に反対する人はなぜ、反対するのか、その理由を書きなさい。
ねらいは、自分の考えに間違えや、穴は無いか客観的に確かめさせることです。
見通しをもたせる
授業の流れや目標が明確になると、生徒は安心して学習に取り組むことができるという効果もありますが、空白の時間をつくらないという効果も期待できます。
授業では、板書を映すなどで児童の作業の早さに差が出て、待つことがあります。
しかし、見通しを持たせておくと
「早く書くことができた人は、次になにをするか予想をしなさい。」
「予想ができたら、頭の中で先に問題をやってみなさい。」
「今日の目標を達成するために必要な作業を3つ、提案する準備をしなさい。」
という指示ができるので、空白の時間を作らなくて済みます。
以下では、見通しのもたせ方をいくつか提案します。
教科書で見通しをもたせる
教科書を使って見通しをもたせます。
よく算数の授業で使う手です。
授業の最初に以下のような指示をします。
①教科書◯ページを開きなさい。今日はここまでが学習する範囲です。
②一言でいうと今日は何を学習しますか?それが書いてある場所を示しなさい。
算数の教科書は上の部分に「かけ算のひっ算」「分数の計算」「面積の表し方」のように学習する内容が端的に書かれています。
続けて以下ように問いかけます。
③今日はたし算・ひき算・かけ算・わり算の何を使う?
④今日の内容でわかりにくそうだったり、難しそうなところはどこ?
学習内容や児童の様子によって③と④はやったりやらなかったりです。
単元計画を見せる
多くの授業で使うことのできる手です。
事前にスライドなどで授業の単元計画を作って、児童に見せます。
学習目標を明確にすることで、児童は自分が何を学び、何を達成すべきなのかを理解することができ、自ら学習を進めることにもつながります。
また作ったスライドは児童が自分の端末からいつでも見えるようにしておくこともできます。
完成品を見せる
図工の授業で使う手です。
最初に完成品を見せます。または個別で購入した教材の絵や説明書を見せます。
これだけで、授業のゴールがイメージできます。さらに以下のような発問を入れます。
・これを完成させるためにやることを◯個、順番に言いなさい。
・これを完成させるときに、難しそうなことはなんですか?説明書から探しなさい。
・これを完成させるときに失敗しそうなことはなんですか?説明書から探しなさい。
・お手本よりもいい作品にする方法はありますか?
上のような発問を入れるだけで児童は説明書を読み始め、見通しを持つことができます。
訊く指導を徹底
学習でもっとも大切なのは「きく」力を身に着けさせることです。
きくは学力形成の基本
なぜならば「きく」という行為は学力形成の基本中の基本です。
最初から話す・書く・読むができる赤ちゃんはいません。しかし赤ちゃんがやっていることがあります。それは「きく」です。親や周りの人の声を聞いて赤ちゃんは言葉を覚えていきます。同じように学力形成には「きく」が重要なのです。
「きく」には3種類あります。
漢字 | 意味 | 使い方 | ニュアンス |
聞く | 音声や情報が耳に入ってくること | 無意識、意識的 | 単に耳に入ってくる |
聴く | 意識的に耳を傾け、理解しようと努めること | 丁寧、集中 | 相手の言葉に集中する |
訊く | 質問して情報を聞き出すこと | 丁寧、改まった | 答えを得るために尋ねる |
ここで目指すのは「訊く」です。
訊くがうまくないと、教師の指示が大変すばらしいものでも、聞き逃すなどをして、児童の思考は停止してしまいます。また同時に「きく」という行為は退屈なものです。なぜなら受け身な行動になるからです。だからこそ、能動的な「きき方」の指導が必要なのです。
傾聴の姿勢を徹底
傾聴の姿勢を徹底します。
傾聴とは、まず自分の考えを置いておいて、相手を理解しようと、相手の話に耳を傾けることです。
その際に必要なのが「正対正視」つまりは誰が相手であっても話すときは真正面から見るという意味です。その際のポイントは以下のことです。
・話す相手に視線を合わせる
・話す人の発言を心の中で評価する
ぼんやり聞き流すんではなく、積極的な聞き方を訓練すると、空白の時間が生まれません。
最大の献身は相手に関心を寄せることです。
相手の発言を評価する
上であげた「相手の発言を評価する」というのは、以下のようなことです。
・今の子の発言に対してあなたは賛成、それとも反対か。
・今出た3つ意見の中で明らかな間違えがあります。それはどれか。
・4つの中で、あなたの考えに近いものを選びなさい。
評価させたら、ノートに理由とともに書かせます。その場で挙手をさせてもいいですが、児童は周りの意見に流されて主体的に判断することができなくなります。
最初のうちは教師から上の発問がでますが、最終的には児童同士で「相手の発言を評価」できるようになると、議論が生じるようになります。
まとめ
・常に自分の意見をノートに書かせることで、空白が生まれない
・見通しをもたせることで、児童の思考が促される
・見通しをもたせることで、待つことなく先に児童が作業を進めることができる
・受け身の聞くから、能動的な訊くになるように指導する
先生と児童がともにおもしろい授業を作ろうという「師弟一如」の精神がなければ、いくらテクニックを磨いても授業はおもしろくなりません。
最終的には先生から与えられるのではなく、児童自身が自分で見つけていく、決定していくことが大事なのではないでしょうか。